人の身の何て儚いことか。
そう思った事はたくさんあったがそれを痛感したのはたったの2回だ。(こんなに長く生きていて、2回)
初めはこの子供の祖母(時間の感覚がなく実感がない)が死んでいたと聞かされたとき。
そして―――――
「馬鹿め。」
「うるさい、メタボ猫」
誰がメタボだ私は誰より何よりメタボリックシンドロームに気を使っていると言うのになんていいざまだこのアスパラが!
早口でまくし立ててやれば貧弱な子供は喋る気力もないとでも言うかのようにこちらに目を向けて転がった。(私を無視とは何て無礼な!)
途端、頬の切り傷から血がボタボタ流れだす。しかし子供は動かない。
「夏目、」
「…」
「おい」
「…」
「このもやしひょろ男アスパラごぼう」
「誰がだ!」
自分が貧相なのを気にしていた子供はようやくこちらを向いた。
頬の血はすでに服に染み付いていた。(塔子になんて言い訳する気だ)
「止血ぐらいしろ」
「…先生には関係ないだろ」
「…お前の血の匂いで妖が集まってきてるぞ」
「!!」
それを早く言えよ!と青ざめた子供は(お前が聞かなかっただけだろう)慌ててハンカチを傷口に当て家に戻るといった。
今回も名を返した相手は小妖怪だった。
知性の無い力だけの、(そんなものに情をかけるから怪我をする)
私にとって小妖怪であろうと人間にしてみればその牙を、爪を向けられればひとたまりも無いと言うのに。
甘いことこの上ない。
なにより許せないのはせっかく自分が珍しく用心棒らしいことをしたと言うのに私から相手を庇ったことだ。
庇われた妖はそれを恩義とも思わず子供に牙を向けた結果があの怪我だ。(本当に甘い)
もっともあの時、私が止まれなければあのような怪我だけではすまなかったと言うのに。
そこまで考えて自分の思考が矛盾していることに気付く。
むしろあの時止まらずにいれば友人帳は自分のものになっていたではないか。
今までも、それを望んでいたのではなかったか自分は。
言ったことを破るつもりはないが此処で死ぬぐらいなら友人帳を持つのに相応しくない。
そう思ったのは自分ではなかったか。
(だが、)
そうして自分が彼に牙を向ける瞬間を思い浮かべると何故か気分がよくない。
ましては他のヤツが手を下す所など吐き気がする。
(当然だ、あれは私の獲物だ)
他にのヤツに手をだされて気分が悪いのは当たり前。
では自分は――――?
夏目を見ると血はだいぶ止まったようだが青いハンカチが真っ赤に染まっている。
出血が多かったのか夏目自身の顔色も良くない。(今にも倒れそうに 見 え る )
人間などちょっとしたことで命を落としてしまう脆弱な生き物だ。
だからと言って情をかけることは自分はしない。絶対に。(本当に?)
今だって用心棒として付き合っているのは、この子供の覚悟が気に入ったからだ。
(そしてそれは一時的なもののはずだ)
「…ニャンコ先生、今日は随分と静かだな」
「なんだ急に」
「だって、しっかり助けてやったんだ態度で感謝をしめせーとか言わないじゃん」
「当たり前のことを言うな。言わなくてもわかっていると思っていたぞ」
「………だからメタボなんだよこのブタ猫」
「誰がメタボブタ猫だぁぁぁ!!」
今日の夕飯期待しているぞという意味を込めて念を押せば悪態が返ってくる。
そう、今は自分が気に入っているから。
だから、自分で牙を向けるのを躊躇しているのだと。
飽きた時、自分は子供に牙を向けるのだ。(まるで自分に言い聞かすように)
その日真っ赤に染まった服を見て卒倒しかけた塔子は、夏目に「血の気を増やしましょう」と肉料理を振舞った。
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いつ か あんたをいとしくおもったことを後悔するよ
選択肢 short title
初期の方(一巻ぐらい?)
人の身の儚さと夏目を照らし合わせて何故か苦しくなる先生
自分が守らなきゃすぐに死んでしまうような脆さが愛しいんだけど気付けない
先生は巻を増すごとに過保護になってますよね!
そのうちデレデレな斑夏書きたい(笑)
選択肢様 http://www.geocities.jp/monikarasu/